東京五輪 簡素化よりも中止・見直しを
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中止回避へ 東京五輪「簡素化」急浮上の裏側
来夏に延期された東京五輪・パラリンピックに「簡素化」の動きが急浮上した。安倍首相が掲げた「完全な形」での開催にこだわらず、開閉会式の簡素化、観客の削減、選手を含む大会関係者や観客へのPCR検査をはじめとする医療態勢の見直しなどを盛り込んだ運営方針見直し案を政府が検討し始めたというのだ。しかし、見直し案は、本来なら延期が決まった時点で検討されて然るべき。今さら感が強い。
安倍首相は先月25日の緊急事態宣言解除の記者会見で「完全な形」での開催に言及したばかり。国民には突然の路線変更に映る。その背景には、来年開催できなかった場合には中止と表明したIOC・バッハ会長の発言など、ここへきてちらつく「中止論」へのけん制、中止回避に向けた駆け引きがあるものと思われる。東京五輪を唯一の政治的遺産にしたい安倍官邸の意向が汲み取られているのだろうか。
五輪の運営方針は本来、運営主体の大会組織委員会が責任をもって担うべきテーマ。政府が見直しの具体案まで示して関与してくることは異例。政治、権力者の五輪利用と受け止められる可能性さえある。
今回の延期は言うまでもなく新型コロナウイルスの感染拡大によるためだが、五輪については行き過ぎた商業主義化、国家対抗意識の強まり、巨額開催費用など問題が山積。選手ファーストから利権ファーストになっている側面が強い。五輪そのものの根本的見直しが必要な時期に来ている。
「簡素化」などという弥縫策で乗り切ろうとしても、追加負担は免れない。今の日本に必要なのは五輪開催よりも、ワクチン開発など新型コロナ撲滅のための有効な対策だ。政府が五輪開催にこだわり無理を積み重ねていけば、国民の間から五輪中止論、五輪不要論が沸き起こってくる。
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